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チータについて
始めに
1.チーターの紹介
2.問題点
3.遺伝的多様性
4.チーターについて
5.データシート
6.種族について
7.ドクター・マーカー著「STUDBOOK」について
8.書籍紹介
9.ギャラリー
3. 遺伝的多様性 - Genetic Diversity
チーター、学名でAcinonyx jubatus はその属において唯一の種類です。二万年前、チーターはアフリカ、アジア、ヨーロッパ、
北アメリカの四大陸でサバンナや平原を駆け回っていました。
約一万年前、一種類jubatusを除いて全ての種類のチーターが、気候の変化のために絶滅しました。急激な個体数の減少のために、
家族間で繁殖活動を行わなければならなくなり、近親交配が進んだため、全てのチーターは近縁関係にあると言えます。
近親交配とは、同じ家族や親戚同士の間でのみ繁殖活動が行われた時に起こります。例えば、みなさんの周りを見ると様々な髪の色、
目の色、背の高さなどを見る事が出来ます。もし一部屋にいる人みんなの血液を採取して、血中のタンパク質を見てみると髪の毛の
色と同様に一人一人違います。チーターの血中タンパク質を見てみると、みんなとてもよく似ています。まるでうりふたつの双子の
ようで、それは彼らが近縁関係にあることを示しています。
生物学的遺伝体質の調査は「遺伝子研究」と呼ばれます。遺伝子は、個人がそれぞれの両親から継承する情報を保管するDNAから
成っています。遺伝子は同じ種族であっても個体間では異なります。遺伝子間の変化を見る事で遺伝学者と呼ばれる科学者達は、
個体群内での関係や、感染病がその個体群にどのような影響を与えるかを知る事ができます。さらに、種族間での遺伝子の違いを
比べる事で、遺伝学者は我々が進化の過程を知るのに一役買っています。
遺伝学者達がチーターの遺伝子間の変化を調べてみると、その変化の度合いは他のほ乳類と比べてかなり低い事が分かりました。
ほとんどの種では、血縁のある個体同士は約80%の同じ遺伝子を共有していますが、チーターでは約99%が同じであるとされています。
チーターの低生存率(多くの個体が命を落としている)、精子の質の低下、そして病気に感染しやすいという性質は近親交配による
結果です。近親交配された動物は遺伝子的多様性を損なっているのです。これによってチーターは、伝染病など突然の環境変化に
対する適応能力を欠いており、通常はある種のウイルスに特に感染しやすくなっています。例えば、健康なヒョウの個体群にウイルスが
侵入した場合、ヒョウは遺伝的に多様化しているために全ての個体が死ぬことはありません。しかし、チーターのように全ての個体が
遺伝的に同じである場合は、一個体が感染すれば恐らく全ての個体が感染し、全滅することになるのです。
遺伝的多様性を欠いているために、ただ感染しやすい動物というどころではなく、致死的なウイルスが世界中の野生のチーター全てを
一掃してしまうことが出来るのです。それは種の遺伝子的な差にかかっているのです。
進化の課程で生存に必要のない特徴は排除されます。チーターの遺伝子的多様性の欠如は自然淘汰の課程における特殊化によって
説明がつきます。自然淘汰の結果による遺伝的多様性の損失は、チーターがより環境に適応できるようになることで、種の存続に
有利に働きました。しかし、一万年前の個体数激減時に起こった近親交配の影響と比べると、この自然淘汰の結果から受ける影響は
わずかです。
飼育下において遺伝を多様化させるには、動物園側は近縁にない個体同士を交配させるように細心の注意を払う必要があります。
科学者達は繁殖を増進するために様々な人工授精の方法や試験管内受精(IVF)を試みています。近親交配によってオスの精子の質が
低下しています。異常な精子はうまく泳ぐことができないために、卵子と受精して子孫を残す可能性が減っているのです。人工授精
(A-I)とは、科学者がメスの生殖器官に人工的に精子を送るという検査手技です。この方法では精子が卵子にたどりつくまでに泳が
なければならない距離が短くなります。メスとオスの間での交配は行われません。アメリカではこの人口受精によってチーターの子供が
生まれました。A-IやIVFといった技術を用いる際には、飼育下での繁殖活動のためにナミビアの野生のチーターから精液や卵子を
採取して使用することが出来ます。ナミビアには最大規模のチーターの個体群がいるために、この個体群の遺伝子は世界中の飼育下の
チーターの存続にとって重要となるのです
。
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